「避難勧告」が出されなくなった理由

災害

避難勧告は、災害が発生する可能性がある場合に、市町村が住民に対して避難を促す情報です。しかし、その「避難勧告」はもう出されなくなったことをご存じでしょうか?

きっかけのひとつは2019年台風19号

2019年台風19号は、2019年10月に日本に上陸した台風です。被害が大きかったので記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。この台風は、静岡県や関東地方、東北地方などに大きな被害を出しました。多摩川や千曲川などの川が氾濫しました。この台風で、多くの死者や負傷者を出しました。この台風は「令和元年東日本台風」という名前がつけられました。
幸いにも私の住んでいた地域は無事でしたが、友人が被災したのを覚えています。

災害対策基本法の改正

2019年台風19号の他、近年毎年のように大きな災害が発生しています、それを受け令和3年5月の災害対策基本法が改正されました。
「避難勧告」はそのときの改正により、「避難指示」へ一本化されました。避難指示は、災害が発生する可能性が高い場合に、市町村が住民に対して避難を促す情報です。
「避難勧告」が廃止された背景には、「避難勧告」と「避難指示」の違いがわかりにくかったことがあります。
確かに「避難勧告」と「避難指示」ではどう違うか分かりにくいですよね。実際は「避難指示」の方が危険性の高い場合に出される警報ですが、「勧告」という言葉の方が危険性が高いように感じていた人も多かったとのことです。また、「避難勧告」が出されていても「まだ避難指示が出されていないから大丈夫だろう」と逆に避難が遅れたケースもあったようです。

そういった声を受け、令和3年5月に災害対策基本法が改正されたときに「避難勧告」は廃止され、自治体から出される避難情報は「高齢者等避難」「避難指示」「緊急安全確保」の3つに改められました。
特に「緊急安全確保」に関しては、すでに危機が迫っており避難することすら危険な状態です。「緊急安全確保」の発令を待って避難するのではなく、その前に行動を起こすことが推奨されています。

さらに避難を促す工夫もされているようです

「高齢者等避難」や「避難指示」が発令されてもなかなか避難しない人も多くいます。そういった人たちに避難を促すにはは「避難しなきゃダメだよ」「ここにいたら危ないよ」などと言うより、「他の家はもう集まってるみたいだよ」「避難所に自分たちだけで行くのが不安だからついてきて」「子供を避難させるから一緒に世話をして欲しい」などと言い方を変えると良いとされています。確かに避難の呼びかけというのも言い方で印象が変わるものですね。相手にあった呼びかけを選択しましょう。理論的に危機を伝えるよりも、実際は「周りも避難しているなら自分も避難しなきゃ」という心理の方が行動につながりやすいのです。
ちなみに、広島県で行われた調査では「あなたが避難しないことで他の人の命を危険に晒すことになります」というメッセージが効果的だという結果になりました。確かに、いざ洪水などに巻き込まれてしまったら誰かが救助が来ることになりますね。自分のせいでその人たちが危険に晒されることになると申し訳なさでいっぱいになりますね。
その実験では「どうしても避難したくない場合は身元のわかるものを身につけておいてください」というメッセージも効果があったとされています。死ぬなら身元確認できるものを身につけておいてねというなかなかインパクトのあるメッセージです。しかしこういったメッセージの方が避難する動機になるというのもわかります。
私も免許証抱いて死ぬのは恥ずかしいですし、救助に来てくれた人にも申し訳ないので避難所に行きたいです。

今回は「避難勧告」が出されなくなった理由についてご紹介しました。近年は気候が不安定となり毎年のように大水害が起こっていますね。地震などと違い、大雨や洪水は事前に情報を知ることができます。避難指示が発令されたときに避難することはもちろん大事ですが、大雨が近づいているときは事前に何かあった場合のことを想定しておいた方が良いでしょう。「自分の身は自分で守る」という意識が大事です。

避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月): 防災情報のページ - 内閣府
避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月)
早期避難促進ナッジが与える効果の異質性
J-STAGE

https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/20j015.pdf

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