不幸は最後にやってくる「潜水艦タング」

事件・事故

映画やアニメなどで、主人公があまりにも調子良く快進撃を続けていると「…逆にこのあと何かあるのかな?」と思うことはありませんか?そして、その後予想した通り何かしらの災難に襲われ、立ち向かうことになるというストーリーの作品は少なくありません。
実際の戦争でも、そのようなまるで映画の主役のような道を辿った潜水艦が存在しました。華々しい戦績を上げたにも関わらず、最後の最後に不運に見舞われた潜水艦タングについてご紹介します。

アメリカの潜水艦「タング」

タングは、第二次世界大戦中に活躍したアメリカ海軍の潜水艦です。1944年1月22日の初出撃からタングは就航から次々と戦果を上げていきます。リチャード・オカーン少佐のもと10ヶ月で24隻の日本船を撃沈したという記録を残しました。これは、1人の艦長が指揮を取り続けたという条件では第二次世界大戦中のアメリカの潜水艦で1番の功績です。
この功績を称えられ、のちにオカーン少佐は名誉勲章を受章しました。
ちなみにタングという名前は魚の名前から来ているそうです。タング以外も、第二次世界大戦の頃のアメリカの潜水艦の名前は魚の名前がつけられてるんです。
タングが魚雷で撃沈させたのはほとんどが商船でした。戦争というと、戦闘機や戦艦が激しく戦い合うイメージがあるかもしれませんが、実際のところはこういった一般の船の方が被害が多いのです。戦艦を沈めるよりも、物資の補給を断たれる方が痛手なのです。実際、数々の補給を断たれ日本軍だけでなく日本全体で物資が不足しました。
アメリカ本土に潤沢な資源のあったアメリカとの大きな違いです。

最後の戦いでまさかの展開

1944年10月24日、タングは5回目の出撃中でした。その日の夜、タングは台湾海峡でレイテ島に向かう日本の輸送船団を発見し、攻撃を開始しました。タングは浮上して魚雷を発射し、日本の船を次々と撃沈していきました。艦長のオカーン少佐は自らが船上のデッキに立ち指揮を取っていました。
タングは24発の魚雷を積んでいました。そのうちの23発を発射。最後の魚雷を発射するとその後は攻撃ができなくなるので、帰還する予定でした。
そして、運命の24発目。
なんと、日本の船に向けて発射して魚雷はすぐに不具合を起こし、180度方向転換をしてタングの方に向かってきたのです。
艦内は混乱に陥りながらも回避運動を試みましたが、間に合わず、魚雷はタングの左舷に命中しました。
爆発の衝撃でオカーン少佐やデッキにいた人は海に投げ出されました。
魚雷の爆発により、タングは電気や操舵装置などが全て故障し、沈み始めました。艦内は火災が起こり浸水が始まります。沈む潜水艦から脱出するには、マンセン・ラングを使用する必要がありました。
マンセン・ラングとは空気と二酸化炭素を調節するバルブ付きのマスクです。脱出用の船などはありません。マスクをつけただけの状態で自力で暗い水中から数十メートル上の水面まで浮上しなければなりません。当然ながらとても危険な行為です。

潜水艦救難と脱出:潜水艦乗組員の安全のために | 海洋安全保障情報特報 | 笹川平和財団| 海洋情報 FROM THE OCEANS

船員の中には、諦めて船と運命を共にすることを決め、あとのことを仲間に託した者もいたといいます。
ついさっきまで、自分たちが死ぬとは思っていなかったことでしょう。それはあまりに突然のことでした。しかも、敵の攻撃を受けたのではなく魚雷の不具合が原因というのもやるせなかったのではないでしょうか。
最後の希望としてマンセン・ラングで脱出を試みた人々も全員が助かったわけではありません。急激な気圧の変化や冷たい海水は脱出した船員たちの身体に大きな負担となりました。
最終的に13人の脱出、しかしそのうち3人は溺死、5人は行方不明、残った5人は日本の護衛艦に救助され捕虜となりました。タングは残りの乗員を乗せたまま180フィート(約55メートル)の深さに沈んでいきました。デッキから落下した人を含め、83人の乗員の中で助かったのは9人だけでした。

オカーン少佐は捕虜となったとき、日本兵から暴行を受けました。本来は捕虜に暴行を加えるのは国際法違反ですが、その心境もやむなしですね。オカーン少佐自身も、のちほど「暴行を加えている日本兵が、自分たちの攻撃で怪我をしたり仲間を失った人だと気がついてからは、その行為を受け入れられるようになった」と述べています。彼も共に戦った多くの部下失っているのですから複雑な思いであったのでしょう。それぞれが憎み合って攻撃をしていたわけではないのに、戦争の悲しいところですね。

この最後の戦いを体験してみよう!!

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アメリカの第二次世界大戦博物館では、このタング・ファイナルミッションを体験できる施設があるようです。日本の戦争関連施設とはだいぶ趣向が違いますね。勝利体験ならまだしも、自国の潜水艦が沈没の瞬間を体験する施設を作るのはすごいですね。参加者は一人一人「ミッション」のカードを受け取り、自分のミッションや最終的にどうなるのかを知らされるという施設のようです。
なかなかリアリティのある施設ですね。

USS Tang (SS-306) - Wikipedia
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