前だけデカいあの自転車

雑学

昔の映像などを見ると、前輪だけやたら大きな自転車が出てくることがありますよね。最初に発明された自転車はあんなに前だけ大きかったのかな?と思われている方もいらっしゃるかもしれません。今回はあの自転車についてご紹介します。

「ペニー・ファジング」

前輪が大きな自転車のことは、ペニー・ファージングと呼ばれる自転車の形式です。19世紀後期にイギリスやフランス、アメリカなどで流行しました。ペニー・ファージングは、前輪の直径が大きく、ペダルが直接前輪の車軸につながっている特徴的なデザインでした。

ペニー・ファージングは世界初の自転車というわけではありません。
世界初の自転車は、1817年にドイツ人のカール・フォン・ドライス男爵が発明したドライジーネと呼ばれる乗り物である。これは木製のフレームに前後同じ直径の二つの車輪を取り付けたもので、ペダルやチェーンなどの駆動装置はなく、足で地面を蹴って走るものでした。
ドライジーネは、当時の馬の大量死による交通手段の不足を補うために考案されたもので、時速15km/hという速さで走ることができました。これは当時画期的な発明でした。
ドライジーネは、その後ヨーロッパ各国で模倣され、改良されていった。1861年にはフランスでミショー型というペダルを前輪に直接取り付けた自転車が発売されました。

最初にペニー・ファージングの技術的特徴を備えた自転車を製作したのは、1869年にワイヤースポークホイールの特許を取得したフランスの発明家ウジェーヌ・マイヤーでした。
その後1870年頃に、イギリスのジェームス・スターレーとウィリアム・ヒルマンが設立したCoventry Machinists Co.から発表されたアリエル号がヒット商品となりました。
ペニー・ファージングは、その形が特徴的なだけではありません。近代的な金属加工技術を取り入れ、自転車の設計製作も本格的になりました。ペニー・ファージングの設計の一部は現代の自転車にも取り入れられているのです。

ペニー・ファージングの流行

ペニー・ファージングがこの独特な形となったのは安全性などは度外視してとにかくスピードを出すことを追求してのことでした。時速30km/h〜35km/hほどの速度が出ていたと言われており、ママチャリよりもよっぽどスピードが出る乗り物でした。
ペニー・ファージングの登場により、「サイクリング」というスポーツが登場しました。サイクリングはこれまでにない高速な走りを楽しめるスリリングなスポーツとして愛好され、様々なレースやサイクリングクラブが催されました。
また、今でいうツーリングのようにペニー・ファージングを使用して各地を旅をする人も現れました。

ペニー・ファージングの衰退

一時代を築くほど人気となったペニー・ファージングですが、その後に開発された安全型自転車の登場により衰退しましま。安全型自転車は、1880年代後半から1890年代にかけて、ペニー・ファージングに代わって主流になりました。
安全型自転車は、前後の輪の大きさが同じでした。安全型自転車は、チェーンやフリーホイールなどの新しい技術を使って、後輪を駆動させました。これにより、安全性や便利性が向上しました。現在の自転車に近い形をしています。
安全型自転車は、ペニー・ファージングよりも安くて簡単に乗れるようになりました。ペニー・ファージングに乗る事の難しかった女性や子供でも安全型自転車なら乗ることができます。これにより、階級の高い男性がスポーツのために乗るためではなく、一般の人々が安全に乗ることが出来て徒歩よりスピードの出る便利な乗り物として自転車が普及していきました。

現代のペニー・ファージング

自転車の主流からは外れましたが、ペニー・ファージングは現在でもその独特の姿や乗り心地に魅了される人々がいます。海外では、ペニーファージングの愛好家やクラブが存在し、レースやイベントを開催しています。例えば、オーストラリアのタスマニア島では毎年2月にペニーファージングの世界大会が開催されており、多くの参加者や観客が集まります。また、スウェーデンでは2018年にペニーファージングで3日間のステージレースが行われました。これらのレースでは、古いペニーファージングだけでなく、現代に作られたものも使用されています。
現代に作られたペニーファージングは、素材や部品は現代の技術を用いて製作されています。例えば、軽量で強度の高いアルミニウムやカーボンファイバーを使ったフレームやホイール、空気入りのタイヤやディスクブレーキなどです。これらは古いペニーファージングに比べて安全性や快適性を向上させています。
現代のペニーファージングは、古き良き時代の雰囲気と現代的な技術を融合した魅力的な自転車です。海外では多くの愛好家が楽しんでいますが、日本ではまだまだ知名度が低いといえます。そのうちに日本でも愛好家が増えるかもしれませんね。

今回はペニー・ファージングについてご紹介しました。ペニー・ファージングは、現代の自転車とは違う形でしたが、その中には今でも使われているしくみもあります。自転車の歴史に残した功績は大きいということがわかりますね。

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